港区一刀両断

飲み屋10軒ハシゴ、東横線すごろくと数々の偉業を成し遂げてきたデスモは次の企画を考えていた。今度は中央線に沿って東京を東西に一刀両断しようか、京浜東北で縦に斬ろうか、あるいはこの際、私鉄シリーズを着実に一つづつやっつけるか日夜問わず企画会議は行われた末、一つのテーマが浮上した。「区を一網打尽」である。つまり、東京を23区という切り口で捉えて、区という単位で焦点を当てて行こうという主旨である。そして誉れ高き第一弾として選ばれたのが港区、東京の中でも随一のお洒落エリアである。一網打尽の方法は、さすがに飲み屋を全制覇する訳には行かないので「銭湯」が題材として選ばれた。そう、港区の銭湯を一日で全部廻るのである。そしてせっかく港区民と裸の付き合いをする訳であるから、移動する際もより地域に密着する為に全て徒歩で賄う。加えて一つのルールとして、湯舟に浸かる際には必ず「あ〜熱い」と(明らかに聞こえるように)発声する。先客に話し掛け易いきっかけを造ってあげて、コミュニケーションを円滑に運ぶ狙いである。かくして怒濤のロードが始まった。<詳細は以下レポートをチェケラッチョ!>

ふれあいの湯
芝2-2-18 / 参考湯温: 44℃

JR浜松町駅から徒歩約5分、どこをどう斬っても典型的なオフィス街。ここで、銭湯の開店直後(15:00)は(地元のシニア達が一番風呂を狙いにくるから)以外と混む事を知る。風呂が狭い上にシャワーヘッドも少ないから順番待ちが発生するが、そこは確固たるルールがある模様である。
外観は鉄筋の4階建てで、各フロアを受付、女湯、男湯、休憩所と割り振っている近代的な銭湯。内装もきれいだった。外を出て少し歩いたらすぐNECやニチメンの本社ビルが聳え建っていて、非現実感は満点。
万才湯
三田5-23-16 / 参考湯温: 37℃(←温度計が間違っていたこと間違いなし)

慶応大学の近く。古き良き銭湯。「あ〜熱い」に対し、「熱いと感じるのは風呂がおかしいか、体がおかしいかどっちかだ」というコメントが常連から返ってくる。
海岸浴場
港南4-2-20-101 / 参考湯温:(温度計が壊れていたため計測不能)

「海岸」とは港区の地名であって、大半の人々が抱いている港区に対するイメージとは程遠い雰囲気の倉庫街である。 そこにひっそりと営業するこの風呂屋は「ひょっとすると次回来たらもうないかも知れない」と感じさせる程、閑古鳥が鳴いていた。しかし銭湯を貸切り状態で堪能できたのは貴重な体験であった。 港区どころか、東京とは思えない程わびさびのブルースが漂っている場所。
高輪浴場
高輪2-6-2 / 参考湯温: 47℃(!)

高輪プリンスの裏側を歩いて5分程。「熱い」に対して、「じゃあ、薄めてやろう」と常連が水を足してくれたが、それでも本当に熱くて苦痛だったが、折角(我々のような若輩者に合わせて)薄めてくれたので全身真っ赤になるまで我慢して堪えた。意外と義理堅いデスモであった。
三越湯
白金5-12-16 / 参考湯温: 45℃

風呂から上がってビールを飲んでいると、ご主人がつまみとして落花生を出してくれた。 どうやらここではビールを飲む(かつ、礼儀正しい)客には隣接している自宅の晩御飯のおかずがつまみとして振舞われるそうだ。この日はまだ晩飯時ではなかったので、落花生とクッキーを頂戴した。店内に松井と由伸のポスターが貼ってあったので、ご主人とジャイアンツの話でもしようと話題をふったが、いつのまにか話は「白金近辺でご主人が遭遇した有名人」の話に変わり、その話はなかなか終わらなかったのであった。
竹の湯
南麻布1-15-11

銭湯には珍しく、サウナ(別料金)があった。加えて、意外にもその日初めて我々と同年代の若者と一緒に入浴した。
越の湯/ 麻布十番温泉
麻布十番1-5-22

※十番温泉については弊バンドの曲「麻布十番」の歌詞をご参照。風呂の事を歌っている訳じゃないけど、言いたい事は同じである。
小山湯
三田1-11-2

一の橋から約3分程歩いた住宅街にある。ご主人曰く、港区では最古の風呂屋。 天井が高く、木造の内部の湯気で遣れた梁などが歴史を感じさせる。風呂から上がった近所のお父さんが、パジャマを着てそのままの格好で帰って行った。 あなたは港区をパジャマ姿で歩く事を想像できるだろうか。ここではそれが現実なのである。
清水湯
南青山3-12-3

表参道の交差点からすぐ。原宿〜表参道〜青山界隈で飲んだ後にすぐ入れる銭湯がある事を発見したのは大きい収穫である。
 
総括・港区とは

「港区」というと何を思い浮かべるだろうか。少なくとも私は青山、六本木、赤坂などのナイトライフ、あるいは新橋、虎の門、芝のビジネス街をイメージする。昼間は勤め人が出勤し、夜には遊び人が押し寄せて、各々の然るべき時間が来たらそれぞれの場所へと帰って行く。そう言う意味では港区とは昼夜問わず区外の人口が多く、「生活」とは無縁の、実体が掴み難い地域という印象があった。しかし今回の企画で実感したが、生活はある。生きているプロセスに不可欠な生命の鼓動が根付いている。住居に関しても、麻布の高級マンションのみならず、例えば葛飾区にあっても全く遜色ない古い木造アパートも存在する。魚屋、八百屋、金物屋もある。美容院ならぬ、床屋もある。パジャマを着て道を闊歩するお父さんもいる。港区の舞台裏とも言うべき側面を目の当たりにして、また一歩東京に近付いたと感じたデスモであった。

総括その2・ホリデーという観点から

ただ風呂に入るだけだったが、今までの中で一番過酷なホリデーであった。特に最後の三田から南青山までの徒歩は筆舌に尽くしがたい程遠かった。そして10軒目終了後、口もろくに利けなくらいの疲労が我々を突如に襲った。思い返せば、9軒目までは「とにかく前に進もう」という目的があったので、疲れはどこか意識の彼方に追いやっていたが、ゴールして、これ以上風呂に入らなくてもいいという安堵が生じた瞬間、抑制していた疲弊が一気に表面化した。風呂に入って汗を流すのも立派な運動である。その上、延べ15キロ以上歩いているのである。最後に、こんな無謀且つ非生産的な企画に付き合ってくれたユーコさんとれいなに最大の敬意を表明したい。

※港区の銭湯に関する情報は全てこのホームページから入手しました。